真空成形トレーには、いくつかの素材を使用することができます。どの素材も同じように見えて、それぞれ「耐熱性」「強度」「透明性」「コスト」「環境負荷」などの面で性格が異なります。まずは代表的な素材ごとの特徴を押さえておくことで、自社の製造ラインや製品仕様に合ったトレーを選びやすくなるでしょう。ここでは、真空成形トレーでよく使われる素材の種類と、それぞれに向いた用途について詳しく解説します。
ポリプロピレン(PP)は融点が約165℃と、一般的なポリエチレン(PE)よりも高温に耐えられます。そのおかげで、成型加工の際にも熱で変形しにくく、かつ輸送時に温度変化があってもトレーが変質しづらいのがメリットです。熱による変形や反りが起こりにくいため、温度変化の大きい現場や長距離輸送が前提の物流にも向いています。
また、酸やアルカリといった薬品にも強いため、薬品を扱う現場やクリーンな環境が求められる製造ラインでも活躍します。クリーンルームや衛生管理が厳しい製造環境には、ポリプロピレン(PP)は適した素材でしょう。樹脂自体が比較的軽量で、比重が小さいため、トレー自体の軽量化にも貢献します。
一方で、PPは低温環境では硬くなりやすく、衝撃で割れやすくなる場合があります。冷凍環境やマイナス温度帯で使用する場合には、衝撃条件を確認しておくことが大切です。また、透明性はPETよりも劣るため、中身をしっかり見せたい用途よりは、機能性や耐久性を重視する用途に向いています。
クリーンルームで多く活用されるポリプロピレン(PP)は、さらに剛性が高く、ある程度の衝撃なら受け止められる特徴があり、繊細な部品を運ぶ際に活用できます。底面にリブを設けることで、荷重に耐えつつ軽量なトレー設計がしやすい点も評価されています。
また、静電気による部品のダメージを防ぐために、帯電防止処理を施したポリプロピレン製トレーが選ばれるケースも多いです。表面抵抗値をコントロールしたグレードを使えば、静電気でホコリが付きにくくなり、埃の混入を嫌う電子部品や半導体製造ラインでも安心して使用できます。
正確な寸法で成型しやすく、電子基板や半導体チップなどを規格に合わせて効率的に収められる点も、ポリプロピレン(PP)製の真空成型トレーがおすすめの大きな理由です。専用仕切りや段積み構造なども含めて成形しやすく、「保管」「搬送」「組立ラインでの扱いやすさ」を一体で設計しやすい素材といえます。
原料価格は安定的で、製造過程も比較的シンプルなため、ポリスチレン(PS)の真空成型トレーは大量生産可能で、経済的な選択肢です。一度に多くのトレーを作ってストックしておく際でも、低コストかつ在庫管理が容易というメリットがあります。薄肉でもコシがあり、形状保持性が高いため、軽量な商品を支える用途に向いています。
PSには、透明性が高いグレード(GPPS)と、耐衝撃性を高めたグレード(HIPS)などがあり、用途に応じて使い分けが可能です。外観を重視するパッケージには透明グレードを、多少の衝撃に耐えたい用途には耐衝撃グレードを採用するといった選び方もよく見られます。
軽量な小物や食品の量産を行っている工場には、ポリスチレン(PS)の包装トレーをおすすめします。ポリスチレン(PS)は軽量のため、配送時の持ち運びが楽で、人手による作業が多い工程に向いています。積み重ね時も自重が小さいため、棚・ラックへの負担も軽減できます。
また、無臭で食品衛生上も扱いやすいため、弁当や総菜を入れるトレーにもよく採用されています。表面に印刷やラベルを組み合わせることで、ブランディング性の高いパッケージを構成しやすいのもPSの特徴です。透明性を活かせば、中身が見えるパッケージとしても使いやすいでしょう。
食品用では、耐熱温度が70〜90℃程度である点に留意しつつ、冷蔵展示や短時間の常温保管を目的としたトレーに向いています。一方で、高温の揚げ物や電子レンジ加熱を前提とする用途には不向きなため、使用温度条件は事前に確認しておくと安心です。
ポリエチレンテレフタレート(PET)は成型しても割れにくく、透明度が高いので製品を魅力的に見せたいときに適しています。光沢感のある透明トレーをつくりやすく、店頭での見栄えを重視するパッケージなどで多く採用されています。
また、焼却しても有毒ガスを出さず、再生利用しやすいのもポイント。回収されたPETボトルを原料とした再生PET(リサイクルPET)を使用したトレーも増えており、環境配慮型のパッケージとして注目されています。大量に使用しても廃棄コストを抑えつつ環境負荷を軽減できることから、近年ますます需要が伸びているプラスチックの一種です。
グレードによっては耐油性やガスバリア性にも優れており、惣菜・サラダ・生菓子などの包装にも幅広く用いられます。透明性と機能性を両立させたい場合、選択肢に挙げておきたい素材です。
透明度が高く、衛生管理もしやすい特徴で、ポリエチレンテレフタレート(PET)の真空成型トレーは注射器や一部医療機器のパッケージに採用されています。滅菌工程を前提とした設計がしやすく、内容物の状態も一目で確認できます。
耐水性や耐薬品性にも優れ、医療現場で重要視される清潔さを保ちやすいのが魅力です。表面が滑らかで汚れが付着しにくく、使用後の廃棄やリサイクルルートも整備されているため、トータルで運用しやすい素材といえます。ただし、高温環境では変形のリスクがあるため、オートクレーブなど高温滅菌との相性は事前確認が必要です。
塩化ビニール(PVC)は、可塑剤の量を変えることで、ゴムのように柔らかい素材にも、しっかり硬い素材にも加工できます。柔軟性が必要なトレーから、堅牢性を重視したトレーまで幅広い硬さで設計できるため、用途の幅が広い素材です。
また、塩素を含む分子構造のため、薬品や油脂、紫外線などに比較的強いのも利点です。たとえば、屋外で使うトレーや、薬品を扱う現場でのパーツ収納トレーなどで好まれる傾向にあります。表面硬度を高めれば傷も付きにくく、長期使用を前提としたリターナブルトレーにも採用しやすい素材です。
一方で、焼却時の処理方法や、使用する可塑剤の種類によっては食品用途への適合性に注意が必要な場合もあります。食品分野での利用を検討する際には、法規制や安全基準を確認したうえでグレードを選定することが欠かせません。
耐薬性が高い塩化ビニール(PVC)は、化学薬品を管理する現場で利用されるケースが多いです。酸・アルカリ・油分に対して安定しており、薬品ボトルや分析機器の部品トレーなどで活躍します。傷がつきにくく、耐候性もあるため、過酷な環境でも長持ちしやすいといえます。
汚れが付いてもふき取りが容易で、繰り返し使えるのも大きなメリットです。洗浄や除菌を繰り返す運用にも対応しやすく、「使い捨てではなく、何度も利用したいトレー」を導入したい現場に向いています。
真空成型トレーは、素材選びで大きく使い勝手が変わります。ポリプロピレン(PP)の耐熱性や剛性、ポリスチレン(PS)の手軽さとコストメリット、ポリエチレンテレフタレート(PET)の美しい透明感とリサイクル性、そして塩化ビニール(PVC)の幅広い硬度調節や耐薬品性など、それぞれの特性を踏まえて導入を検討することで、高いパフォーマンスが得られるでしょう。
同じ形状のトレーであっても、どの素材を選ぶかによって「耐久性」「安全性」「見栄え」「環境負荷」「トータルコスト」は大きく変わってきます。製造工程や輸送環境、保管条件、最終的な廃棄・リサイクルまで含めて総合的に検討しながら、自社の製品にふさわしい素材を選ぶことが重要です。
小ロット生産や短納期の試作対応などは当たり前にどの会社も対応しています。そのため、ここでは品質を担保するISO9001を取得し、安定して生産し続けられる自社工場を持つメーカーの中から、製造物別におすすめの会社を紹介します。
※1※2 2024年10月調査時点。参照元:ジャパン・プラス公式HP(https://www.j-p.co.jp/products/buhintray/)
※3 参照元:柏木モールド公式HP(https://www.ksmold.co.jp/advantage/environment/)
※4 参照元:エフピコ公式HP(https://www.fpco.jp/product/sd.html)
※5 参照元:エフピコ公式HP[PDF](https://www.fpco.jp/dcms_media/other/press_keieikikaku_20231030_4.pdf)